サクラサク

桜の樹の下には屍体が埋まってゐる
と書いたのは梶井基次郎だったか
桜の下には死体が埋まっていて、艶やかに咲く桜ほど埋まっている死体が多いとか
満開の桜が時に人を狂わせるとか、都市伝説のような話が
今でも語られるのは、何らかの根源的イメージがあるのか
大学の桜もいいかげん咲き始めたよう


 「想」


「下心を持って相手の本質を見定める」のか
それとも
「地下に埋められた貴方が、いまは樹と一体になり
 それを見る私の魂を振るわせる」
そんな切ない物語なのだろうか


俺のことを指導してくれている先輩からの指示で
すべての操作を自分で行なって
研究室での実験の一連の流れを覚えることになった
そこでさっそく今日から開始
まずは目的のタンパク質を作らせるために
大腸菌にDNAを挿入して形質転換
シャーレに撒いてきた
明日、朝一番に液体培地で培養ですわ


どうやら記憶の無い空白の時間は騒いでいただけだったよう
まぁ多少の迷惑はかけたようだけれど
よかった
取り返しつかないことやってたらどうしようかと